コミックエッセイ:夫婦・子育ていまむかし
マイワールドの強さで男を沼らせる「岡本かの子」〜クズ文豪列伝特別編〜【夫婦・子育ていまむかし Vol.19】
普通の子育ては…無理でした!
そんなふたりの間には太郎が生まれます。
しかし浮世離れした価値観で稀代の不器用だったかの子さんが普通の子育てができるわけもなく…当然ぶっ飛んだ育て方になったようです。
その最も有名なエピソードがこれ。
自分の仕事を邪魔されたくないから
「幼い我が子を柱に縛り付けていた」
…今なら虐待で児相に通報待ったなしな大炎上案件ですよね。
そもそもふつうの生活も危うい人なのに、子育てなんて…寝ている赤ん坊に蹴躓いたことも一度や二度ではなく、家事炊事は何ひとつもまともにできるものがなかったかの子さん。
実はあとふたり子どもがいたのですが、どちらも幼いうちに亡くなっており、太郎自身が
「自分は生まれ持った生命力で成長した」
と言い切るほど、かの子さんの育児は危なっかしいものだったようです。
息子が年頃になれば自分の恋愛相談までしちゃうし(お父さん一緒に暮らしてるんですけどね…。)親子関係というより兄を慕う妹のようになっていくという…。
…ってこの状況はかなりスレスレで凡人には理解できないわけですが、息子からは「ユニークで生々しい人間そのもの」として許容され、「対等な人間同士のぶつかり合い」ができたと愛され尊敬されているかの子さん…。他人の親子関係に口を挟むもんじゃないなぁ、とつくづく思いますね。親子も相性です相性!
そんな普通じゃない育児をしながら書き上げた『老妓抄』をはじめとした小説は、濃厚な表現力で人間の生々しく素朴な姿を描き文壇で評価を得ました。自分のことは客観視できているようには見えないんだけど、他者への鋭い観察力と表現力は見事な点も不思議な魅力です。
良き母とは…? を改めて考えるキッカケに!
私も今では子育ては自分の人生の一部ぐらいに気楽に考えられるようになり、ほどほどに手を抜けるようになりましたが、正直ひとり目の時は病的に自分を追い込み、かの子さんとは逆のタイプのヤバい人でした〜。
人生全てを子どもに捧げよ!子どものことを常に中心に考えて子どもの生活に全て合わせて、良い母ー世間的に見てそう見えるようーにならなくてはとノイローゼ状態だった頃を振り返ると怖くなります。
毎日愛しい子どもといられて幸せ〜と言いながらも思い出すのは家の中で赤ちゃんとふたりで息が詰まりそうだったこと。
出先ではコミュ障のくせに社交頑張ってママ友を作り、子ども向けの料理ばかりを必死に調べて作っていたこと。
休みの日は疲れている夫を急かして公園やイベントにせっせと出かけ、思い出作りと称して写真を撮りまくっていたこと…。
うーん、幸せだったことは間違いないんだけど、同時に大人として、女性としての自分を押し殺しすぎて心が悲鳴を上げていたなぁ。
かの子さんの生き方を真似したいわけではなく真似なんてできませんが、でも自分は自分、女性としてもひとりの人間としても自分の尊厳を大事にして生きることを妥協しないで貫く生き様は少し羨ましくも…あります。
良妻賢母の呪いを解いて、自分なりのバランスを追求したい…なんて考えるキッカケになりました。
かの子さんの小説作品は多くはありませんが、代表作である『老妓抄』はまさにかの子さんの美意識、人生観を表しているのでぜひ読んでみてほしい短編です。
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