くらし情報『夭折した異能のデザイナー・高橋大雅の「応用考古学」というキーワード』

夭折した異能のデザイナー・高橋大雅の「応用考古学」というキーワード

と細尾の細尾真孝社長。同ギャラリーが入る本社ビルは、真孝氏の実弟である建築家・細尾直久氏によって2019年9月にリニューアルされたもの。版築の積層、炭に漆喰を入れて左官職人の刷毛さばきを見せたファサード、金箔を3mmのラインで5階まで張り上げた箔打など、工芸建築と呼ばれる職人技巧の協業によって京都の町並みに新しい景色を与えている。

夭折した異能のデザイナー・高橋大雅の「応用考古学」というキーワード
京都・祇園の総合芸術空間「T.T」外観

その工芸的な手法は高橋大雅の服作りにおいても同様だ。奄美大島の泥染やインディゴ染、岡山の旧式力織機によるデニム生地、和歌山の吊り編機によるスウェット、錆止めしていないリベットなどのアイテムに見ることができる。生産工程に時間を要し、年月を重ねることで風合いが変化していく“さび”の美意識は奇しくも細尾の本社ビルと同年同月、2021年9月にオープンした総合芸術空間「T.T」に凝縮されている。


夭折した異能のデザイナー・高橋大雅の「応用考古学」というキーワード


「幼い頃に祖母に連れられて歌舞練場に『都踊り』を観に来ていた大雅は、この祇園南側のエリアが本当に好きでした」と高橋の親族は述懐する。歴史遺産の風致地区のなかで、大正時代に建てられたと思しき元お茶屋のこの空間は20代のデザイナーが一人でデザインしたとは思えない完成度を見せる。

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