くらし情報『コム デ ギャルソン 2025年春夏コレクション - ヴェールが織りなす〈現れ〉』

コム デ ギャルソン 2025年春夏コレクション - ヴェールが織りなす〈現れ〉

そもそもヴェールを払う行為とは、脱ぎ去りえない最後のヴェール、つまり神秘につき当たることを運命付けられているのではなかろうか。むしろ存在とは、ヴェール自体に宿る。存在とは布地の襞であり、様態である。なしえることは、だから、この布地を操ることで、襞の様態を変幻させることにほかならない。

ヴェールという可塑的な平面が織りなす、襞としての存在。こうして紡ぎだされた衣服は、変幻自在に身体をデフォルメした造形として立ち現れる一方、もはやエフェメラルな柔らかさを捨て去り、確固たるフォルムを示している。古代ギリシアの装いを彷彿とさせるプリーツドレスは、ビニールだろうか、ハリと光沢を帯びた素材感により彫刻的な佇まいを示す。量感を湛えたドレスにおける薄いファブリックすら、密に襞を織りなすことで、もはや風に動じる様子もない。


こうして、衣服は構造物としてその存在を現す。鮮やかな赤地に文様をあしらったドレスは、クリノリンを彷彿とさせる、膨らんだシルエットを示している。渦巻くようなプリーツは、布地が自在に織りなしうる襞のダイナミズムを、そのまま固化したかのようだ。そして、頭から身体までを包みこむ三角錐状のウェアや、柱を彷彿とさせるドレスへと及んで、衣服はそれ自体、厳格な構造へと研ぎ澄まされているといえるだろう。

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