ノワール ケイ ニノミヤ 2025年春夏コレクション - 薔薇の想像力
と題された今季のノワール ケイ ニノミヤが、薔薇の多義性に身を浸し、いわばその明るみと暗がりの両面に目を向けているように思えるからであった。
薔薇の両義性は、たとえば、クラシカルとアヴァンギャルドのせめぎ合う緊張感に見てとることができよう。クラシカルなテーラードジャケットを用いつつ、その丈感は大胆なショート丈。時に幾つものサスペンダーが、セパレートしたファブリックを宙吊りにする。あるいは、ドレスやジャケットには、身体を締めつけるようにしてベルトを重ね、フェティシズムの雰囲気を高めている。
愛とも、血とも結びつく薔薇の赤色は、無彩色である黒と白と並んで、コレクションを構成する主要なカラーのひとつとなっている。フリルやギャザーが華やぐドレスはもちろん、チュールが幾重にも重なるベスト、艶やかなライダースジャケットなどに、その例を見出せよう。また、薔薇の官能的な側面は、パフスリーブドレスなどの装飾、トップスやドレスの構成要素へと反映されているといえる。
そして、薔薇の花が象徴する旺盛な生命力は、執拗にパーツを反復することで織りなされる造形に反映されていよう。ベルトを連ねることで構成したジャケットは、ファブリックではなくパーツから衣服を編みだす、簡潔な例だ。