シャネル 2025年春夏コレクション - 自由へと“飛翔”した女性たちへ
装いにまつわる社会的な視線に立ち向かった動きのひとつが、1920年代に流行したギャルソンヌ・ムーブメントだといえる。少年を意味する「ギャルソン」が示すように、これは、少年を思わせる髪型や服装で装った、活動的な女性たちのファッションであった。その軽やかな足取りは、今季、大胆なスリットを入れたショートスカート、ストレートなラインを描くツイードのジャケットや軽快なドレスばかりでなく、インサーションを施すことで動きを出したスーツなどに見て取ることができるだろう。
1920年代は、ヨーロッパ社会を大きく揺るがした第一次世界大戦を経て、人々が古い秩序や価値観から解放されつつあった時代であった。加えて、「レザネ・フォル(狂騒の時代)」と呼ばれるように、美術、文学、舞台といった芸術の諸ジャンルが交錯して豊かな文化が育まれている。シャネルもまた、そのただ中にいた。1920年代の動きに深く身を浸したシャネルのスタイルは、活動的なギャルソンヌ・ルックの変奏として、今季のコレクションに響きわたっているのだ。
では、「飛翔」とは何に向かうものだろう。
「想像的」とは、その謂いである。そして、身体的な飛翔と想像的な飛翔が交わるのが、バレエにほかならない。