2021年10月23日 19:00
アツシ ナカシマ 2022年春夏コレクション - 可能が可能のままであったところ
さながら“可能を可能のままに”想像させるかのように。
交わる格子と線
黒々とうごめくものは、ふとした拍子に意識の上にのぼり、白い光の中に晒される。しかしだからといって明晰なイメージをとるわけではなく、意識と潜在意識のあわいにあって、それは人の目を絶えず欺く。ウエストを絞り軽やかに裾の揺らめくワンピースや、オープンカラーシャツには、ホワイトとブラックのストライプ柄とチェッカーボード柄が組み合わせて用いられているが、ふたつの柄は互いに絡み合い、溶け合い、通常ならば線や格子がもたらすはずの端正な秩序から逃れさっている。
混ざり合うイメージ
そうした絶えずうごめく心の中の潜在的なイメージはまた、ブラックのTシャツやシャツ、ワンピースなどにのせたグラフィックに反映されている。アイテム自体は極めてベーシックなシルエットであるため、多様なイメージが混ざり合う、色鮮やかで鮮烈なグラフィックの存在感を高めているといえよう。
ドレスの力強さ
ありうるものをありうる姿のままに留めおく。それはある意味で、決してひとつに収束せず、千々に枝分かれする未来の可能性へと望みを託すことかもしれない。
したがってショーの終盤で登場したドレスは、フリルにフリルを重ね、ドレープにドレープが揺らめくボリューミーなフォルムで衣服の形の自由さを示しつつ、ホワイト、ピンク、そしてグリーンの明るいカラーでまとめられている。