ヨーク 2022年秋冬コレクション - クリフォード・スティル、画布にふるえるポリフォニー
そのように表層を引き裂くウェアは、その下層──インナーのウェアであるかもしれないし、それを身にまとう身体そのものかもしれないし──を多声的に垣間見せる。
「立ち止まったおりに見せる佇まい」について書いた。そうした場面が生まれるのは、今回のショー演出ならではかもしれない。会場はさながらギャラリー空間──ヨークのこれまでのコレクションに携わった10人の作家の作品が展示され、そのなかでショーが行われた。モデルはいわばギャラリーを訪れる鑑賞者であって、展示作品に目をとめ、ふと立ち止まり、それに見入り、ソファーに座り込み、歩みを緩め、あるいは追い越し追い越され、時に振り返ってはもと来た道を辿り直す。モデルたちの足取りは、ここでは単線的ではなく、それ自体ポリフォニックだ。本記事のタイトルとした「ポリフォニー」とは、色彩と素材ばかりでなく、ショー演出における多声性の謂いでもあった。
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