皇室だけではない…藤原定家の子孫・冷泉家が伝える「歌会始」
「そんなね、元公家いうても別に、いまでは普通の家ですよ」
取材を申し込んだ際、貴実子さんはこう言って笑ってみせた。しかし、そこは800年余の歴史を誇る冷泉家。21世紀の現在も、旧暦にのっとって1年を過ごしていることだけをみても、やっぱり普通とは言い難い。
「それはホンマです。歌会始だけは、よそさんが『あけましておめでとう』と、あいさつしてはるのに、『うちはまだ12月ですから』言うてるわけにもいかんから。なんとなくお正月だけは新暦、みなさんと一緒にしてますけど。ほかは旧暦でやってます」
歌会始と並ぶ重要な年中行事、七夕の夜の「乞巧奠」をはじめ、桃の節句や端午の節句も、すべて旧暦で執り行う。そうすることが、日本の伝統を守ることに通じると冷泉家の人たちは信じている。
「乞巧奠は星祭り。新暦の7月7日って、たいがい梅雨の真ん中。星もへったくれもないですよ。同じく新暦3月3日なんて、まだ、さぶいさぶいですよ。それが、旧暦ならおよそ1カ月後ですから、桃の花が咲くほんわかした陽気になって。歌を詠むには、そのほうがぴったりくるんです」
先祖から継承した日本の伝統を、ただひたすらに、営々と守り続けてきた冷泉家。