渡辺美佐子 朗読劇を続け34年、子どもたちに語り継ぐ「私の原爆」
さらに、渡辺さんは映画の中で、擬人化された日本国憲法「憲法くん」も演じる。
「女優生活も長いので。これまで、いろんな興味深い役を演じてきましたけれど、まさか日本国憲法を演じる作品に出合えるなんてね」
渡辺さんはこう言って愉快そうに笑うが、朗読劇、そして憲法くんに通底するのは、彼女の平和を求める切なる思いだ。
“初演”から34年の長きにわたって続いてきた朗読劇。日本橋劇場では、女優たちの熱のこもった朗読に圧倒されたのだろう。客席のあちこちから鼻をすする音が漏れ聞こえてきた。終演後、客席が明るくなると、目頭を押さえる人や、ぼうぜんとして立ち上がることができない人も少なくない。
「私たちも、最初の公演の稽古では、みんな泣いちゃって大変でした。
涙で台本が読めず、稽古にならないの。自分で読んでいても、ほかの人が読むのを聞いていても泣けてきてしまってね。木村さんから怒られましたよ。『読み手が泣いて、どうするんだ!』って。だから、いまも必死になって、涙をこらえて読んでいます」
朗読劇は被爆地である広島、長崎でも上演された。
「私、ふだんは舞台でもなんでも、緊張して足が震えるなんてことないんです。