渡辺美佐子 朗読劇を続け34年、子どもたちに語り継ぐ「私の原爆」
「それを木村さんから伝えられたとき、私たち女優の中に『続けたい、続けなきゃいけない』っていう思いがあったんですね。それで、皆でいくばくかのお金を出し合って、女優18人で『夏の会』というのを立ち上げたんです」
朗読劇の継続はかなったが、そこは全員が表舞台の人間だ。裏方の事務仕事や宣伝、会場の手配など、慣れないことばかりで手を焼いた。渡辺さんは「苦労したけど、続けてきてよかった」と話す。
「新たな語り部の方が生まれたこともうれしかったですし、各地の学校で上演したことで、子どもたちが原爆のこと、戦争のことを『普通の生活が奪われてしまうことなんだ』とわかってくれたこともうれしい。朗読劇との出合いが将来、彼らが『戦争は嫌です!』というための原動力に、きっとなってくれると思うんです」
じつは、渡辺さんたちの朗読劇は、今年が最後の夏になる。
「女優18人で始めた夏の会も、11年続けていく間に、亡くなった方がいて、病気療養中の方がいて……気付けば11人になってしまいました。私も立派な後期高齢者ですし、そろそろ皆、体力的に限界なんです」
若い世代の演劇人たちに、あとを継いでほしいとは思っていない。