STAP騒動が逆風に…“iPS細胞で網膜再生”偉業にあった危機
『即刻やめろ』『同じ理研なんだから、こっちのデータもでたらめではないのか』等の声が上がり、途端に、高橋さんたちにも負の影響が降りかかる。
しかし、高橋さんも黙ってはいなかった。ツイッターなどを駆使して研究について発信し、小保方氏の件についても臆することなく言及したのだ。どうしても、自分たちのプロジェクトを止めるわけにはいかなかった。この時期、高橋さんは肉体的にも精神的にも本当に大変な日々を送ったと語る。
「実は、あの時一番勇気をくれたのも、当の患者さんたちだったんです」
騒動の渦中にあったある日、患者会の幹部が研究室を訪れ「先生、僕たち、何をやったらいいでしょうか」と申し出たという。その言葉に、高橋さんの目に涙が浮かんだ。ここでこそ頑張らなくてはならない。
患者さんとの約束がある。患者たちの思いを背に、これで突破できる、と高橋さんは確信していた。
「あとは、やっぱり、山中先生の人間力によるサポート。先生の一声で多くの人が集結して、6ヶ月分の研究を1ヶ月でやってくれたんです。すごいチームでしたね」
そして迎えた同年9月、iPS細胞から作った網膜の細胞を加齢黄斑変性の患者に移植する手術は世界で初めて成功。