元ヤン女子が林業家に 苦境に立たされても100年続いた森を守る
そんな思いがグシャグシャと募っていった感じです」
そのころ、父から本を渡された。タイトルは『奇跡の杉』(船瀬俊介著・三五館)。
「それまで本なんて手にしたこともなかった私が、その本だけは一気に読めたんです」
45度の超低温で木材を乾燥する技術「愛工房」を開発した伊藤好則さんの取り組みを描いた本だった。木の栄養素や酵素を守り、良い材木を作り出す。100度で一気に乾燥させ、木に負担をかける、主流の方法とは大違いだった。読み終わったとき、優佳さんは、自分に誓った。
「おじいちゃんたちがずっと守ってつないできた木は、私が守る!」
優佳さんは、3〜4時間かけて、夢中で長文メールを打ちまくり、開発者の伊藤さんに送った。
「文章がいいわけでも、美辞麗句があるわけでもない。
でも、彼女の訴える力はすごかった!」
伊藤さんも、すぐさま優佳さんに電話を入れ、2カ月後には、野中家を訪ねている。13年11月のことだった。
「愛工房」による丁寧で木々に優しい乾燥技術。また、山を守りつつ林業を行っていくという、野中さんのスピリッツ。それらは着々と実を結び、日々前進し続けている。
そんななかで、負けず嫌いの野中さんはこう言った。