帰省時、母がゴミの中に…5年後274万世帯が「ゴミ屋敷」に
それからゴミ出しが怖くなり、できなくなってしまったのです」
このようにゴミが出せない、という状況には誰もが陥りうると語るのは『ルポゴミ屋敷に棲む人々』(幻冬舎)の著者で、公衆衛生看護学の専門家・岸恵美子東邦大学大学院(看護学研究科)教授だ。
「高齢になると、誰もがこれまで普通にできていたことができなくなります。ゴミ出しもその1つ。特に、地域のゴミ置き場までゴミを出しに行く『ステーション回収』は、高齢者にとっては負担が大きい。何とか歩くことはできても、片手に重いゴミ袋を持って置き場まで歩くのは無理という高齢者も多いのです。また、ふだんはなんとか出せていても、雨や雪ではゴミを出せずため込んでしまう、というケースも。近所の人や子どもに頼めば、と思うかもしれませんが、ゴミ出しは買い物と違って頼みにくいと感じる人が多数です。さらに、認知機能が衰えてくるとゴミの分別が難しくなります。
分別ができないことで隣人とトラブルになり、ゴミが出せなくなる人も。その状態が続けば、当然いつかはゴミ屋敷になります」
本誌では、岸先生監修の下、ゴミ出し困難に陥る危険性のある世帯数を試算した。
世帯主が75歳以上で、高齢者自らゴミ出しを行わなければならない、単身世帯、夫婦のみ世帯の数は、’25年には約858万世帯となる(国立社会保障・人口問題研究所’18年『日本の世帯数の将来推計』より)。