兄との絶縁、そしてがん…なかにし礼さんの闘い続けた生涯
戦争が終わると、兄は家族の元に戻った。しかし一攫千金の夢に取り憑かれ、博打のようにコロコロと稼業を変えたという。
「兄貴は、押出しのある雰囲気でしたから、金のありそうな人のところに行って『一緒に仕事をやろう』と持ちかけると、相手は信用する。それで、兄貴は社長になって、相手が工面した金を使ってしまい、会社が潰れる。その繰り返しですよ」
のちになかにしさんが作詞家として活躍すると、兄は大量のお金を無心しては豪遊。それだけでなくなかにしさんの印税を自らの口座に振り込まれるよう勝手に変更し、なかにしさんに生命保険までかけていた。さらに経営に失敗して作った4億円もの負債と2億円の個人的な借金をなかにしさんに被せると、行方をくらませた。
なかにしさんが必死に作詞をし続け生活を立て直すなか、兄は突然戻ってきた。
しかし、今度はクラブの女性に入れあげ2000万円もの借金をしていると発覚。これまで「兄弟が諍いを起こすと母が悲しむ」という思いで必死に耐えてきたなかにしさんだったが、ついに絶縁を言い渡した。その16年後、兄が亡くなったと耳にした時は思わず「ばんざい!」とつぶやいたという。
そして2つ目が、“がん”だ。