藤井二冠も師匠には素の18歳に 筆者語る「棋士師弟は唯一無二」
弟子たちは、師の想いと指し継がれてきた将棋の定跡を学ぶ中で、自分の一手に宿る歴史を感じ取ってきたのではないでしょうか」
いまやほとんどの棋士が将棋の研究にコンピューターを導入している。師弟関係にも変化が生まれているのだろうか。
「今後の師弟関係については、正直わからないですね。若手棋士の実力が拮抗して競争が激しくなり、10年後、20年後にはベタラン棋士の引退が早くなるとも言われています。また現在の若手は過去の棋譜を並べず、AIでの最新研究に没頭してるようです。これまでの将棋界の慣習や、棋譜を並べるといった勉強法は見られなくなりつつある。人から人に受け継がれる伝統は、薄れていくかもしれません。寂しいことですが、それはすべての文化の継承にも言えることではないでしょうか」
藤井二冠の大活躍で、将棋界に興味を持ち始めている人々が増えている。
師弟関係に触れることが、その楽しみの一助になれれば、と野澤氏も言う。
「将棋はわからなくても、棋士たちの生き様を見つめることも観戦の楽しみです。棋士は一般社会では出会えないようなピュアな存在であり、棋士と棋士の友情は子どもの頃からこの世界で生きていくと決めた者たちの、深い絆です。