コロナ現場看護師の怒り「五輪出動は看護師の使命に反する」
要請文には、あまりに“厳しい条件”が並んでいた。
開催地である東京都内の私立病院で、コロナ患者の看護に当たっている看護師のBさんは、強い“怒りの声”を挙げる。Bさんは、コロナ禍が始まる以前に五輪の参加を志願・登録していた。しかし、感染拡大の状況や、組織委員会の対応を踏まえて「辞退した」と明かす。
「コロナ患者のいる病棟で働いている私がいま現場を離れていいのか、と疑問を感じるようになったんです。それに、このまま黙っているのは“看護職の倫理綱領”に反しているんじゃないか、と思って」
看護職の倫理綱領とは、日本看護協会が定める行動指針のこと。
「この綱領の中に、『看護師は、人々の生命と健康を守るため、さまざまな問題について社会正義の考え方をもって社会に発信しなければならない』という趣旨の定めがあります。私たちは、目の前の救わなければならない命をなにより優先しなければならないのです」(Bさん)
がん・感染症センター東京都立駒込病院の看護師で、東京都庁職員労働組合病院支部の書記長も務める大利英昭さんも、現場の看護師たちの“苦悩”を目の当たりにしている。
「もともと五輪の医療スタッフに登録していた看護師たちは、『語学力を磨いて、さまざまな国の人々の健康に貢献したい』という志を持って希望していました。