2021年12月5日 06:00
「先生も103歳まで生きそう、と…」66歳年下秘書が語った寂聴さん最後の日々
台所にある椅子に座っていた先生を、応接の和室に連れていったり、先生の寝室に連れていったり……。いつもだったら『もうしんどいよ~』と言って嫌がったでしょう。でも先生は息子といっしょだと、お互いを支えるようにしながらうれしそうによく歩いていましたね。
先生は『この子、私に命令してくるんだよね』と、言いながらも、『すごく意思がはっきりしている』『この子は生きぬく力を持っている』と、いっぱい褒めてくれたのです。だから9月に入院したときも、よく息子のことが話題になっていました。毎日話すのは、息子がいつしゃべり始めるかということ。先生は息子とおしゃべりすることも楽しみにしてくれていたと思います。
これは先生が一度退院したときの話なのですが、息子にこんなふうに話しかけていました。
『ママが早く2人目の赤ちゃんを産んでくれて、あなたがお兄ちゃんになるといいね』と――」
■「病院で死ぬのは嫌だ。寂庵で死にたい」
9月末に退院した寂聴さん。しかし5日後には再入院することになった。
「10月に5日間だけ寂庵に帰ってきたとき、いつもの台所の椅子から庭を眺めながら、『やっぱり病院で死ぬのは嫌だ。寂庵で死にたいね』などと言っていましたが、本人もそれほど真剣に考えていたわけではなかったと思います。