煮魚の「煮汁の沸騰待ち」しなくてOK 省略できる下ごしらえ
花嫁修業で教わった丁寧な下ごしらえ。家族のために、おいしく仕上げるために、きちんとしてきた人も多いはず。だけど、最近の食材や調理道具の進歩は目覚ましく、今までの常識が塗り替えられているの、知ってますか?最新の常識、教えますーー!
「下ごしらえは、“昔どおり”にこだわることはありません。“今”に合わせて変えていいのです」
そう話すのは女子栄養大学名誉教授の松本仲子先生。以前より段取りを減らしても、今の環境ならおいしく調理できるという。
「ハンバーグに入れるパン粉は、以前はカチカチで固かったから、牛乳に浸さなきゃいけなかった。油揚げだって最近はよい油で作られているから、油抜きは不要です」(松本先生・以下同)
また、調理器具の進化は驚くほどだ。
「昔、七輪で煮炊きしていたころとは雲泥の差ですよね。
今なら多少手を抜いても大丈夫。『このひと手間をやめてみたら……』と実験感覚で試したり、それぞれのやり方で家庭料理を楽しんでください」
松本先生が、料理の下ごしらえの新常識を教えてくれた。
■「豚の角煮」バラ肉のゆでこぼし
〈旧常識〉ゆでこぼして脂を取り除く→〈新常識〉冷まして、脂を固めて取る
豚の角煮を作るときは、これまで2、3度ゆでこぼして脂を取る下ごしらえが常識だった。だがもっと簡単にするには、豚肉を60分ほど下ゆでして、そのまま冷ましておく。冷えると浮いた脂が白く固まってくるので、それを取り除く方法でOK。そのまま味付けして煮れば、とても手間いらずな料理。動物性脂肪をあまり取りたくないなど、健康面を考えて脂をとる回数を決めればよい。
■「ハンバーグ」タネの下ごしらえ
〈旧常識〉パン粉は牛乳に浸し、玉ねぎはよく炒め冷ます→〈新常識〉パン粉も玉ねぎもそのままでOK
以前のパン粉はカチカチに固かったので牛乳に浸すひと手間が必要だったが、最近のパン粉はやわらかいのでその必要はない。
少量の牛乳は直接加えると、ハンバーグの味がよくなる。また玉ねぎも、炒めると甘味が出ておいしいが、炒めずに生で入れてもさっぱりした味わいになっておいしいので、玉ねぎの下ごしらえも抜いていい。
■「煮魚」煮汁の沸騰待ち
〈旧常識〉煮汁が沸騰してから魚を入れる→〈新常識〉冷たい煮汁に魚を入れてから火にかけてOK
煮汁が沸騰してから魚を入れるのは、魚のうま味を逃がさないため。昔、七輪で調理していたころは煮汁が沸騰するまで相当時間がかかった。そのうえ、大家族分の煮魚を作るには、大きな鍋と大量の煮汁が必要で、これも時間がかかる原因のひとつだった。今は、ガスなど高火力な調理器具で、しかも家族の人数も少なく煮汁も少量で済むため、煮汁が冷たいうちから魚を入れてもすぐに沸騰するのでうま味がとけ出す心配はない。
手間いらずの新常識で、春の恵みを味わいつくそう。
【PROFILE】
松本仲子
管理栄養士、医学博士。
著書に野田真外氏と共著で『その下ごしらえ、ホントに必要?段取り少なく美味しくできる、家庭料理の新常識レシピ』(幻冬舎)がある