2023年3月9日 06:00
住民は戻らず賠償金裁判で溝も生まれた…“見せかけ復興”に被災者が感じる怒り【12年目の被災地:前編】
(写真:時事通信)
「田んぼが大きい人も小さい人も、会社をやっていようがいまいが、仲よく暮らしていたのに、あの日を境に変わってしまった」
こう語るのは福島県浪江町から避難し、今は復興公営住宅で暮らしている今野寿美雄さん(58)。
’11年3月11日に起きた東日本大震災や、東京電力福島第一原子力発電所の事故からまもなく12年がたとうとしている。しかし、今なお住民たちが震災によって受けた“傷”は広がり続けているのだという。今野さんが語る。
「事故当時から国や東電は住んでいた地区や事業の内容によって賠償金の額に差をつけていました。
浪江町民ら721人が、国と東電に約89億円の追加の損害賠償を求めた訴訟が続いています。そこで5人ずつ住民が尋問されました。その際、東電はあなたには2億円払った、あなたには1千万円払った、と賠償金の格差があることをこれ見よがしに明かしたんです。
所有している土地の広さや営んでいた事業のあるなしで差がつくのは当たり前です。しかし、そのせいで、住民たちの間に深い溝ができてしまいました。賠償を収束させたい岸田政権が、住民同士を争わせて国に怒りの矛先を向かわせないようにしているのではと思ってしまいます」