大江健三郎さんが死去 最後の長編小説後に本誌が目撃した「神経症療法」病院通い
大江さんはもともと外に出てストレスを発散させるようなタイプではありません。最近は自宅で好きな日本酒やビールを1人で飲む時間が多くなり、奥様も大江さんの身体を心配しているみたいです」
同年7月下旬、妻たちといっしょに都内の大学附属病院へと向かう大江さんの姿を本誌は目撃。大江さんが訪れたのは院内にある精神神経科施設で、そこには「森田療法」と書かれていた。
森田療法とは、精神科医・森田正馬氏が確立した神経症に対する精神療法。対人恐怖や広場恐怖などの恐怖症、強迫神経症、不安神経症、心気症などが主な治療対象で、近年では慢性化するうつ病やがん患者のメンタルケアなどでも用いられるという。
森田療法を受けているのは、執筆できない葛藤と関係があるのだろうか。本誌は大江さん本人に話を聞いた。
――大江先生が小説を書けないと悩んでいらっしゃるとお聞きしました。
「いえ、悩んでおりません」
――お酒の量が増えていて、奥様もご心配されているとお聞きしました。
「お酒もあまり飲みません。(妻も)心配しておりません。私たちは健全です」
大江さんは毅然と答えると名刺を受けとって、去っていった。
最晩年まで執筆の意欲を失っていなかった大江さん。天国では、どのような作品を書き上げるだろうか。
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