2023年4月2日 06:00
東京・赤羽「三益酒店」の三姉妹 枯れかけた昭和親父の酒店「もう一度、咲かせます!」
酒販業界で生き残っていく厳しさを、身をもって知る孝生さんは、簡単にイエスとは言いにくかったのか。そのときのことを母・博子さん(62)は、こう振り返った。
「美保、泣きながら私に言うんです。『社長になりたいんだ』って。ちょうどそのころ、取引先の酒蔵さんでも、代替わりするところがいくつかあって。20代後半でお酒造りを始めた人もいた。当時、美保は32歳。決して若すぎるということはないと思いましたし、熱意を持って本当に頑張っていたから。
私、主人の機嫌のよさそうなときを狙って言ったんです。『そろそろ認めてあげてもいいんじゃない?美保に(社長の)名前を変えてあげたら?』って。そうしたら主人、『いいよ』って言ってくれたんですよ」
母の口添えのもと、三姉妹の長女・美保さんは、三益酒店の三代目社長に就任した。2016年11月のことだった。
■料理とお酒のペアリングも蔵元の人を呼んでのイベントも、父がやりたいと思っていたこと
世代交代を果たした三益酒店は「ワクワクを創出する酒店」という新たなコンセプトを打ち立てた。
「うちは駅から徒歩20分と、決して立地に恵まれているとは言えません。それでも来てくれるお客さんというのは、三益酒店のファンであり、地酒のファンの人たち。