「DNA」「魂」…四代目がこだわり続けた「澤瀉屋の証明」猿之助4代150年の明と暗
「三代目の作品をさらに一段高めることを目指し、『スーパー歌舞伎II』を始めたのです。佐々木蔵之介や福士誠治など、歌舞伎界以外の俳優を起用したのには目を見張りました。『三代目に負けず劣らず、プロデュース能力も高いな』と感心しました」(犬丸さん)
さらに澤瀉屋らしく、因習を打ち破る反骨心も持ち合わせていたようだ。
「かつての歌舞伎界には“一門の壁”というものがありました。『あの家の芝居には出ない』みたいな目に見えない確執があったのです。それを崩したのも四代目の功績だったと思います」(犬丸さん)
犬丸さんは、「まるでサーカスだ」と揶揄された宙乗りなどのけれんを市川宗家、いまの十三代目市川團十郎までもが取り入れたことに注目する。
「それは何よりお客にウケたからですよね。宗家まで取り入れたとなると、誰も邪道だとは言わなくなります。
そして、けれんの経験豊富な澤瀉屋の四代目の知見を皆が必要としました。
さらに四代目は自分が演出するスーパー歌舞伎IIなどに、各家の御曹司たちを呼んできては大役を振った。そうやって一門の壁を越えたネットワークを築いていったのです」(犬丸さん)
ついに猿之助は四代目にして、歌舞伎界に確固たる立ち位置を築いたはずだったのだが……。