小林幸子 10歳で歌手デビュー、不遇の15年を経てつかんだダブルミリオン
「すみません、いま、そちらでリクエスト1位の曲はなんですか?」
電話に出た女性は「少しお待ちください」と言うと、何やら紙の資料をめくる音が聞こえてきた。そして、数秒後……。
「ああ、『おもいで酒』ですね」
小林さんが「これで最後」と覚悟を決めてリリースしたばかりのシングル、そのB面の曲名だった。それでも、まだ信じられない。
「あの、歌ってるのは誰ですか?」 「えーっと、小林幸子ですね」
小林さんは「思わず、受話器を二度見しましたよ」と振り返った。
次第に全国的にリクエストが増えていき、レコードが売れ始めた。すると、今度はテレビ。これまで見るばかりだった人気の歌番組から、出演オファーが届くように。
「15年、まったく売れない間は神様っていないって思ってたけど、やっぱりいたんだ、私のことちゃんと見ててくれてたんだ、そう思いました」
最終的に『おもいで酒』は200万枚のメガヒットを記録。この年、小林さんは第21回日本レコード大賞で最優秀歌唱賞を受賞し、念願だった紅白歌合戦に初出場を果たす。
「このときの紅組司会は水前寺清子さん。水前寺さんと私は同期、デビューが同じ’64年なんです」