残留元日本兵の家族が両陛下にご接見…実現させた日本人女性
ずっと歴史のなかに封印されていたんですね」(小松さん)
家族たちを捜し出し、その封印をといたのは小松さんだった。彼女はベトナム在留邦人の最古参の1人であり、最年長の女性。現在、ベトナムの国際放送「VOV(ベトナムの声放送局)」の日本語課に所属し、シニアアドバイザーの肩書で活躍している。
「私はスアンさんのことを、1人の女性として尊敬しているんです。それは、自分の母親に対しても同じ。大変な苦労を黙々と耐えて生きてきた“先輩”たちのおかげで“後輩”の私は好きなことをやって、こんなところまで来られているんだから」(小松さん)
一面に広がる水田と、大通りを横切る水牛。’92年9月2日。ハノイにやって来た小松さんを迎えたのは、のどかな田園風景だった。
一方、ドイモイ(刷新政策)が始まったベトナムでは、経済が開放され、成長の波に乗ろうと人びとは外国語を学び始め、日本語ブームもあった。気がつけば約15年もの間、小松さんはハノイで日本語教師を続けた。生徒は延べ数千人に及ぶ。
「そんななかに、いたんです。