残留元日本兵の家族が両陛下にご接見…実現させた日本人女性
元日本兵の子どもたちの情報を集めるなかで、「奥さんが健在の家もある」と教えられ、すぐに会いに来たのだ。スアンさんと、上等兵だった夫との出会いは、’45年の太平洋戦争が終わる4カ月前だという。スアンさんが働いていた軍人クラブに彼が買い物にやって来て、それからわずか数カ月後に結婚した。
「彼はとても優しい人で、けっして怒らなかった。夫婦げんかも一度もなかったよ」(スアンさん)
ところが、’54年9月。夫は「出張に行く」と告げたきり、帰ってこなかったのである。暮らしは困窮し、食べるものもない貧しさのなか、スアンさんは女手一つで3人の子どもたちを育て上げた。当時の苦労を尋ねても、「もう時代が変わったから」とにっこりほほ笑むだけだ。
「スアンさんのすごいのはね、離ればなれになって60年以上にもなるのに、夫を愛しつづけていることなんです」(小松さん)
どんなに生活が苦しくても、彼以外の男性は考えられないと再婚せず、いまでも愛用の枕には夫の軍服が巻いてある。
「それを夫だと思って、毎晩抱いて寝てるって。