五大路子が宗教学者・山折哲雄と考える「ひとり」の大切さ
ひとりで生きて、そして死んでいくことの惨めさだけがクローズアップされ、ことさら貶められているのではないかと考えたんだ」
五大「おっしゃるとおり、ひとり暮らしのお年寄りが、全員不幸かというと、必ずしもそうではないと思います」
山折「かつて、ひとりという言葉は、もっといい意味に使われていた。それがなぜネガティブにばかり使われるようになったのか……、このあたりで“ひとりの復権”が必要だと思った」
五大「昔はどのように使われていたのですか?」
山折「万葉集をまとめた大伴家持の作品で《うらうらに照れる春日に雲雀あがり心悲しもひとりし思へば》という歌がある。確かに、ひとりでいることはさみしい。でもそれは単なる孤独ではなくて、この歌のように、人との関係を思いながら悲しみ、その静かな感情とともにしみじみと生きるということ」
五大「さみしさ、悲しさにきちんと向き合うということでしょうか?」
山折「向き合うというよりは、そういった感情を“道連れにしている”と、私は解釈しています」