林真理子 101歳で旅立った母への「遠距離介護とみとり」
みよ治さんをモデルにした小説『本を読む女』もある。林さんにとって、かけがえのない、敬愛する母――。
林さんに両親の介護問題が浮上したのは、平成15(’03)年。父・孝之輔さんが大病をして入院し、みよ治さんの一人暮らしが始まったのだ。林さんは、多忙な仕事の合間を縫うように、頻繁に実家に帰るようになっていた。
「幸い、実家近くに従姉妹が住んでいて。毎日、『おばちゃん、生きてる?』って、よく面倒を見てくれました。本当にありがたかったです」
病院暮らしが続いた孝之輔さんは、家に帰りたがったが、みよ治さんは「絶対、嫌」と。
2人はくしくも生年月日がまったく一緒。90歳に近い妻が同い年の夫を介護するのは、たしかに無理がある。5年後、孝之輔さんは亡くなった。享年93だった。95歳になったとき、みよ治さんがポツリと言った。
「バチがあたって、こんなに長生きしちゃった。10年前に死んでいたら、いい人生だったと思えたかもしれないけど」
そんなふうに気弱になることもあったが、「私も作家になりたかった」と漏らしたのは97歳のころだ。