オペラが始まる! 新国立劇場《ウィリアム・テル》稽古初日レポート
そして最も重要なのが、アルノルドとマティルドのラブシーン。このスタイルのオペラには欠かせないシーンだが、シラーの原作にはラブストーリーはない。ロッシーニはこの物語をオペラとして構築するために、ふたりに愛の二重唱を与え、このラブシーンがあるからこそ、《ウィリアム・テル》は「オペラ」になった。オペラ全体の基本となる重要な要素なのだと説く言葉に力が入る。
撮影:堀田力丸
続いて、今回の演出・美術・衣裳を手がけるヤニス・コッコスによるコンセプト説明が始まった。演出そのもののコンセプトというより、その背景となる、作品自体を彼がどのように解釈しているかという丁寧な内容。かいつまんでご紹介する。
過去の作品を超越した、ロッシーニ最後のオペラ
《ウィリアム・テル》は、ロッシーニ最後のオペラ作品。
彼のそれまでの作品を超越して、さらに先に行くような作品なので、それ以上先に行けなくなった。ここで彼がオペラ創作の筆を折ったのは芸術的に興味深い決断だと思う。
時代の先を行くモダンさに取り組むロッシーニらしい精神は、ダンス部分にも現れており、今回はナタリー・ヴァン・パリスの振付により、ストーリーに直結しない、異なる次元を語るものになる。