2023年7月7日 12:35
佐藤流司、七木奏音、茅野イサムら出演 悪童会議の旗揚げ公演『いとしの儚』初日レポート
鈴次郎と儚のシーンはヒリヒリとする場面も多いが、「二人がずっと一緒にいられますように」と儚が人間になれるまでの100日を観客もやきもきしながら指折り数えて祈らずにはいられないのは、ピュアで不器用な恋人未満の二人が互いに最高のピースとして奇跡の出会いを果たしている証拠だろう。
鈴次郎の“ライバル”・ゾロ政は、20年ぶりに役者として板の上に戻ってきた茅野イサムが熱演。登場の瞬間は「待ってました!」という客席中の心の声が聞こえてくるくらい、場内の温度がグッと上がった。謡うような台詞回しには心の内が読めないギャンブラー然とした圧が宿り、鈴次郎と相対するシーンはまるで刃物を突きつけているかのような愛情たっぷりの殺気が放たれる。そこに対峙する鈴次郎の危なっかしい剥き身感も堪らない。
彼らを彩る人々も曲者揃いだ。裏も表も知り尽くしたやり手ババアのお鐘をチャーミングに魅せてくれる野口かおる、賭場を仕切る長治親分のダンディさが素敵な田中しげ美、生臭と常識人とを行き来する妙海を演じる日野陽仁の軽妙さ、その妙海とのナイスコンビネーションも印象的な三木松役の佐藤信長などなど、それぞれに備わった「欲」と「常識」