ロシアも期待する三浦基演出『罪と罰』、まずは日本で開幕
三浦の作品づくりは、既存のテキストを再構成・コラージュするという独自の手法で、発語法も言葉の抑揚やリズムをずらし、言葉そのものを剥き出しにすることから音楽的とも評されている。そんな彼の演出スタイル“自由な読み”によって、原作の大きなテーマのひとつとなっている信仰問題などが大胆に普遍化されることも期待される。また、この作品は「棺桶のような狭く暗い小部屋に閉じこもっていた主人公が殺人を契機に外へ出かけ、人々と出会う物語」とも言われるが、人から人へ向かう“ベクトル=矢印”を視覚化し、歩くという日常的動作により空間を形づくっていくという。
2007年から取り組んできた「チェーホフ四大戯曲連続上演シリーズ」をはじめ、ロシアの作家の作品を継続的に上演してきた三浦にとって、本作はこれまでの創作活動の集大成といっていい。まずは日本で、どんな可能性を拓くのか。4月にはロームシアター京都の新館長就任も控える三浦。大きな節目となる2020年の第一歩が幕を開ける。
文:伊藤由紀子