有名キャラ集結! 菊五郎らが鶴屋南北の原作に新たな命を吹き込む
国立劇場の新春公演はこのところ尾上菊五郎率いる音羽屋一門を中心に、正月気分を膨らませてくれるような楽しい趣向を取り入れた通し狂言が披露されている。今年は四世鶴屋南北作『御国入曽我中村』をアレンジして『通し狂言 菊一座令和仇討』と題して上演する。
歌舞伎では昔から「正月は曽我物」が定番と言われている。曽我物とは曽我五郎十郎兄弟による仇討ちの世界を含む物語を指し、『御国入曽我中村』も題名で分かるように、文字通りの曽我物だ。作者の鶴屋南北は、複数の物語の世界を巧みに組み合わせることで新たに創作するのを得意としており、この作品でも曽我物の時代設定に『鈴ヶ森』の幡随院長兵衛や白井権八、近松門左衛門の浄瑠璃『槍の権三重帷子(やりのごんざかさねかたびら)』の笹野権三など、有名キャラクターを登場させている。今回はこの「綯交ぜ(ないまぜ)」の世界をさらにもうひとひねりし、新たに仇討ちの物語を創作するという。鎌倉、鈴ヶ森、三島と所が次々と移り、吉原の花魁も登場。国立劇場としては8年ぶりに両花道を使うと聞けば、ダイナミックな場面展開が予想され、期待が高まる。
さらに菊五郎の幡随院長兵衛に菊之助の白井権八で『鈴ヶ森』となれば、それだけで名場面になるだろうことは想像に難くない。