2021年10月10日 19:30
鬱屈しがちな今だから観たい、心が弾む要素に満ちた舞台 京本大我主演ミュージカル『ニュージーズ』開幕
これまで出演したミュージカルでは繊細なイメージのあった京本だが、ひと回り大きくなった体と力強い歌声とダンスとで、カリスマ性のあるリーダー像を見事に造形。特に一幕ラストでは、高い技術とあふれる芝居心の溶け合った、絶唱とも言うべきソロを聴かせてくれた。
ミュージカル『ニュージーズ』ゲネプロより写真提供/東宝演劇部
ミュージカル『ニュージーズ』ゲネプロより写真提供/東宝演劇部
ストライキを後押しする新聞記者でありジャックの恋の相手でもあるというバランスの難しいキャサリン役を軽やかに演じた咲妃みゆ、松葉杖をつきながらもしっかりと群舞に参加して身体能力の高さを見せつけたクラッチー役の松岡広大、聡明さと無邪気さが無理なく同居する様がさすがだったデイヴィ役の加藤清史郎ら、脇を固めるキャスト陣もみな好演。ニュージーズ役のアンサンブルの面々が、まるでなんでもないことのように、そこここでヒラリとバク転を決める姿も印象に残った。
ファイアスタインの脚本には、原作映画とは異なる部分がいくつかあり、ジャックが絵描きの設定になっていることもそのひとつ。彼の絵が重要な役割を果たす展開から伝わる、ファイアスタインの“芸術の力”に対する信念は、芸術が不要不急と言われる今だからこそ余計に胸に響く。