重厚な時代狂言から情緒たっぷりの世話物まで、多彩な演目がそろった三月大歌舞伎、本日開幕
だがやがて源義経による敦盛の首実検が行われ……。戦乱ゆえの悲劇、世の無常が胸に迫る義太夫の語りとともに描かれる。もう一本は『雪暮夜入谷畔道』。雪の中、江戸・入谷の蕎麦屋にやって来た御家人崩れの直次郎。追われる身となった直次郎は、江戸を離れる前に恋しい遊女の三千歳にひと目逢おうとするのだが……。清元の名曲に乗せて直次郎と三千歳の艶やかな色模様が描かれる河竹黙阿弥の名作。
第三部の一幕目は『楼門五三桐』。天下の大盗賊、石川五右衛門が煙管をくゆらせながら景色を眺めている。
一羽の白鷹がくわえた血染の遺書から、自らが真柴久吉に討たれた大明国の宋蘇卿の遺児であることを知る。かかるところに一人の巡礼が通りかかり……。「絶景かな、絶景かな」で始まる石川五右衛門の名セリフで知られる歌舞伎味たっぷりの人気作。
もう一本はAプロ『隅田川』とBプロ『上雪、下鐘ヶ岬』。
『隅田川』。清元に乗せて、錯乱しながら我が子を求める母・班女の前の姿が胸を打つ。能の「隅田川」をもとにした美しく幽玄な世界が広がる。
『雪』俗世を離れて仏門に入った芸妓が、独り寝に思い出すのは昔の恋人のこと。
今夜と同じ冬の夜、男の訪れを待ちながら、ひとり過ごした日に思いを馳せ……。