【独占インタビュー】三谷幸喜が再び挑む“恩師”ニール・サイモンの傑作コメディ『23階の笑い』
も、自分では絶対に書かないような作品をあえて演出することで、何か自分に得られるものが欲しい――、そんな思いがあるんです。ただ、僕はニール・サイモンに出会えたことで、この演劇の道に進んだとも言えるので、やはりいつかはやりたいと思っていました。でも『おかしな二人』や『サンシャイン・ボーイズ』のような、いわば“ザ・ニール・サイモン”的なものは、今、僕が演出しても、あまりワクワク感がないように思っていて。僕も、お客さんも。だから『ロスト・イン・ヨンカーズ』も今回も、ニール・サイモンの王道から少し外れたものにあえてチャレンジしてみようと思ったんです。
——『23階の笑い』は1950年代のアメリカ・テレビ業界が舞台。冠バラエティ番組を持つ人気コメディアンと、彼のオフィスで働く個性的な放送作家たちの物語です。ジョークを潜ませた会話の応酬、そのテンポの良さが圧巻ですね。
正直なところ、翻訳台本を読んだ時に、これを立ち上げるのはかなり難しいなと思いました。とくにコレといった事件が起こるわけでもなく、とにかくジョークの応酬で。コメディライターたちの話だから、台詞のすべてがジョークと言ってもいいくらいで、どういうさじ加減でやればいいのか、上演台本を作る時にかなり苦労しました。