国技館と太古を結ぶカムカムミニキーナ『両面睨み節』 が開幕
日本に古来より伝わる神話を題材に、観客の想像力を大いに刺激する劇団カムカムミニキーナの最新作『両面睨み節~相四つで水入り』 が11月14日(木)に東京・座・高円寺1で開幕する。
松村武率いる同劇団の舞台は油断ならない。ただ席に座ってぼんやりと眺めるだけでは、その醍醐味のすべてを味わったとは言い難い。近年の松村作品で、主に題材となるのは日本の神話と歴史。長い時間かけて語り継がれた、つまり時間に裏打ちされた物語と、今現在を生きる私たちとを結ぶ線を、松村はくっきりと舞台上に描いてみせる。
今回描かれるのは、日本書紀に少しだけ出てくる怪物「両面宿儺(りょうめんすくな)」。岐阜県の飛騨地方に伝わる伝説で、公演のチラシによれば「頭一つに顔二つ、四本腕に刀を掲げ、足に膝裏、踵なし」なのだとか。右から左から、前から後ろから、がっぷり4つで取っ組み合ってきた人間たちの歴史が、現在の両国国技館とまっすぐに結ばれる。
物語の起点は、ある日の国技館だ。心臓発作で倒れた行司を救護するため、土俵に上がった女性医師に世間の目は殺到。医師はそのとき、タイムトンネルとなっていた土俵の底で、自らが2000年以上前、飛騨の湖に巣食っていた龍女であったことを悟る……。
客演に迎えるは、ラサール石井。軽妙な喜劇を知り尽くした彼が、神話的世界でどんな存在感を見せるか注目だ。また、八嶋智人や藤田記子ら、凄腕劇団員勢もその腕力を発揮する。遠い昔、人々がのたうち回ってきた歴史が、今を生きる私たち自身に重なって響く演劇体験をぜひ。11月24日まで座・高円寺1、11月30日(土)から12月1日(日)まで大阪・近鉄アート館で上演。
文:小川志津子
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