“アリエルの声”を探して。豊原江理佳が語る映画『リトル・マーメイド』
劇中でも言われていますが、人魚の声は人を海に誘うような響きがあるのだと思います」
その昔から多くの神話やおとぎ話で、海で暮らす不思議な種族が美しい声で人間たちを誘惑する場面が描かれてきた。人間が海に抱く雄大で美しいイメージ、同時に飲み込まれてしまうと戻ってこられない恐ろしさ……人間が海に抱くイメージが“人魚”にも引き継がれている。
「アリエルは単に声が美しかったり、歌がうまいだけではなくて、その声には海の神秘的な部分や人を誘い込むような妖しさ、海のもつ少し恐ろしい部分を含んでいて、それこそが“アリエルの声”なのだと思います。海には不思議な魅力があって、人間が引っ張り込まれてしまうようなことは昔からあったと思います。アリエルはそういうつもりでは歌ってないと思いますが、人間が聴くと誘われて、引き込まれてしまう。そういう妖しさが少し入っているといいなと思いました。だから自分が演じる上でもその部分をちゃんと声で表現したいと思いましたし、歌うシーンでも“歌い上げる”のではなく、声が透き通っているイメージをいつも持っていました」
豊原は人間ではない“人魚の声”を探って丁寧に演技を積み重ねる一方、人魚という架空の存在だから描ける“共感”も大事にしたようだ。