庭劇団ペニノの初期作『笑顔の砦』をタニノクロウがリメイク
ただ、当時は同じ座組で上演することはできなくて。それが今回は実現できそうだったんです。それに、『ダークマスター2016』の稽古で使った城崎アートセンターがとてもいい環境で。何より海があって川があって、山があって温泉があって……っていう周囲の風景が、僕の故郷の富山や、この作品で描いた世界とよく似ていた。それで、城崎で『笑顔の砦』をリメイクすることには何か大きな意味があるだろうと考えるようになりました」
大掛かりな回転舞台で、ひなびた温泉宿に流れる独特の時間を表現した『地獄谷温泉無明ノ宿』(2015年初演)など、独自の空間設計にこだわりを見せるタニノだが、その感性はむしろ外の世界へ広く放たれている。「僕は2011年まで精神科医をやっていたんですが、来る人来る人、人間のことばっかり言うんです。だけど人って、人同士だけで影響しあっているわけじゃないですよね。たまたまつくった飯とか、風の音、そういうものにも影響されている可能性は大いにあって。
生活サイクルもテンションも異なる二つの部屋を隣り合わせにして見せようと思ったのには、そういう意図もありました。関係ないようで関係し合っているもの。稽古で見つめようと思っているのは、当時も今もそのことです」。