2022年10月20日 12:00
油彩画とは違ったヴァロットンの魅力を展観『ヴァロットンー黒と白』10月29日より開催
19世紀末のパリで活躍したナビ派の画家フェリックス・ヴァロットンは、黒一色の革新的な木版画で名声を高めた版画家でもあった。その黒と白のみでつくられた木版画の世界に焦点をあてた展覧会が、東京・丸の内の三菱一号館美術館で、10月29日(土)から2023年1月29日(日)まで開催される。
三菱一号館美術館は、2014年にヴァロットンの回顧展を開催し、この画家の全貌を日本で初めて紹介した実績がある。その際にも一部の木版画が展示されたが、実は同館は世界有数のヴァロットン版画コレクションを誇る美術館だ。今回は、約180点に及ぶそのコレクションを一挙初公開し、油彩画とはまた違ったヴァロットンの魅力を探求する試みとなる。
希少性の高い連作〈アンティミテ〉〈楽器〉〈万国博覧会〉〈これが戦争だ!〉なども含むコレクションはまた、ヴァロットンが生涯に制作した版画の大部分を網羅している。そのため、作品を通じて彼の生涯をたどり、また彼が時代ごとに抱いていた関心の移り変わりを見てとることもできる。
たとえば、スイスからパリに出てきた彼が異邦人としてパリを観察した作品では、「群衆」や社会の暗部を露呈するような事件が、皮肉やユーモアを込めて描き出されている。