【レポート】高橋和也、千葉哲也らキャスト8名が好演 こまつ座『連鎖街のひとびと』
どっしりとした存在感とどこか愛嬌のある言動は、千葉ならではの造形ではないだろうか。
そして、自身の持ち味を十二分に活かしていると思わされたのは、陳を演じる加納。軽妙でコミカル、でもどこか物腰がたおやかなのは、さすが「花組芝居」の座長であり女形であるからこそ、といったところ。部外者として面倒を見ているうちに自分も創作に関わり始める、というのはバックステージものでの「あるある」ではないかと思うが、陳も塩見・片倉を相手に丁々発止のやりとりをしているうちに、芝居に深く関わっていく。
左より)高橋和也、西川大貴、加納幸和、千葉哲也、鍛治直人、霧矢大夢、朴勝哲撮影:宮川舞子
さらに、石谷の婚約者である女優のハルビン・ジェニィ(霧矢大夢)、塩見・片倉にとって因縁の相手でありジェニィの過去にも関わる市川新太郎(石橋徹郎)、音楽家である石谷の同僚ピアニスト・崔明林(朴勝哲)も加わって、『シベリアのリンゴの木』という芝居が形作られていく。誤解やすれ違いゆえのドタバタから、やがて全員が一丸となって芝居を完成させようとして、まさにドラマティックな盛り上がりを見せる。
後列左より、鍛治直人、高橋和也、千葉哲也
前列左より、石橋徹郎、霧矢大夢、西川大貴、加納幸和撮影:宮川舞子
だが、そこに暗い影を落とすのは、ここがソ連軍に包囲され外部から隔絶された大連の街であること。