2023年3月29日 18:00
全公演ソールドアウトしたバンド最大規模のアリーナツアー クリープハイプが見せた“普通”の凄み――3月11日に行われた初日の模様をレポート
このアリーナツアーの規模が、2020年の段階では幕張メッセ、大阪城ホール共に1回ずつだったのが、2回ずつに倍増しているのだ。いったい何が起こっているのだろう。ろくに活動もできないこの数年で、動員を増やしているという事実が示すものは、単純にクリープハイプの楽曲が今を生きる我々のモードにシンクロしているということに他ならない。尾崎世界観が歌の中で〈クソ〉とか〈バカ〉とかあけすけに言う時、それは誰かに対しての文句なのではなく、なんとなく感じている同じものに対して唾を吐いているような気になるのだ。共通の敵とまでは言わないが、この数年間で我々が感じたのは、そこらじゅうにどうにも耐えがたい嘘があるのではないかという不信感だ。それを尾崎はずっと叫んでいたし、バンドはその叫びをより真っ直ぐ響かせるための武装を音楽で施してきた。
「キケンナアソビ」では、LEDがスライドして降りてきて、バンドを覆うような格好で配置されると、そこに色とりどりのグラフィックを投影し、まるで作為の裏側に潜む真実が炙り出されるようにメンバーの姿が見え隠れした。アリーナならではの演出を加えながら、ライブは中盤へと進んでいく。
この日――3月11日は、東日本大震災が発生した日からちょうど12年目にあたる日だった。