森山直太朗インタビュー「映像作品『素晴らしい世界』をきっかけに、見た人がそれぞれの中にある何かを考えるきっかけになってほしい」
もちろんその場でそれを感じていたことは間違いないんでしょうけど、映像にすることでより鮮明に可視化できたということはあると思います。それが実は不思議な体験だったんですよね。記録を記憶として残すということは映像作品の重要な役割で、それはこれまでも当然やってきたんですけど、でも今回の場合、実際の舞台は終わったのに、映像を見ながら「まだ知らないことがあったんだ」っていう感覚になるのは初めてですね。だから、自分の存在を超えて、多くの人に見てもらいたいって思う自分がいるんですよね。
承認欲求なんかとはまた全然違う次元で、ものすごく安直な言い方なのかもしれないんですけど、この映像作品をきっかけに、見た人がそれぞれの中にある何かを考えるきっかけになってほしいんですよね。僕は「空白」と表現しましたけど、たぶん誰もの中に、ずっと放置してきている何かはあるはずなんです。それって、取り出して向き合うのはきついから、ついつい見ないふりをして放置してしまうんですけど、だんだん悪臭を放ちだすんですよ。そうするともっとキツくなっていく。
そこに、僕がそうだったように、この映像作品を通して向き合えるきっかけになるんじゃないかな? そうなればいいな? 芸術やエンタテインメントの存在意義ってまさにそこにあるんじゃないかな......そんなふうに思います。