森山直太朗インタビュー「映像作品『素晴らしい世界』をきっかけに、見た人がそれぞれの中にある何かを考えるきっかけになってほしい」
あるいはそうやって、僕自身が父と母の存在を肯定的に捉えたかったのかもしれない。だから結局僕は感謝しているんですよ。僕のこの境遇に。普通の視点から見たら、おそらく幼い頃に僕を取り巻いていた世界というのは、ある意味で理不尽なものだったと思うんです。でも、僕が音楽を始めることによって、それを僕自身のアイデンティティにすることができた。そこが、人の人生っていうものを考えたときに、面白いし、めんどくさい部分ですよね。だから、「よかったでしょ」って、もし母親に言われたら、それはそれで腹が立つんですけど(笑)。
――ははは。
音楽をやることでしか自分を証明できない、そういう関係だから、たとえば音楽番組なんかで良子さんと僕がふたり並んで歌っている、とかよりも、今回の映画で父の死に際でようやく40年ぶりに3人が揃ったっていう方が望んだ共演の形なんですよ、あれは。
――すさまじいですね(笑)。
ですよね(笑)。だって、幸せな家庭だと思われちゃうと嫌だもん。
――どうして自分が音楽を始めたのか? という根源的な問いの螺旋の中で、そこに父と母との関係というものが大きく関わっていることが改めて分かったと。