視界が広がる感覚を『セールスマンの死』長塚圭史×山内圭哉インタビュー
「いろんな社会の問題が巧妙に入り組んだ形で盛り込まれていますよね。主人公のウィリー・ローマンは資本主義社会を死ぬまで信じて、アメリカン・ドリームを掴み損ねるわけです。他に選択肢はいくらでもあるのに、ひとつの仕組みのなかだけで成功を夢見てしまった結果崩壊する。それは彼だけでなく家族もですね。そうやって老いていく男の様を、あまりにも鋭く描いていて、誰の胸にも刺さる。人間と人間が形成する社会を描いているので普遍性を保ち続けている。今だったらコロナによって『こうであらねばならない社会』の残酷さが浮き彫りになるでしょうし。すごい戯曲だな、と思います」(長塚)
「70年前のアメリカの作品が、いざやってみると僕らの今そこにある物語のように感じられる。
コロナで自分らの暮らしや生き方を振り返ってみたときに、この話を思い出して『ああ!』と思うことがいっぱいあるんですよ。今にビビッドに響く、本質的なものがいっぱい散りばめられている」(山内)
「コロナで疲弊しているいまの僕らの精神状態に届く、胸に迫るんですよね。戯曲としては暗い、転落の物語ですが、最後にビフが何かに覚醒する、その光も描かれている。劇場を出たあと、視界が広がった感覚になるんじゃないかな」