自分はすごく憧れていて、彼を目指してやってきました」
そのホルの師は大歌手ハンス・ホッター。
「自分がそういうドイツ歌曲の正統的な系譜にいることも幸せです」
今回はシューベルトとレーヴェの2つの《魔王》など、物語詩による「バラード」を多く取り上げる。
「バラードの魅力は、一曲の中でさまざまな役を演じること。たとえば《魔王》なら、子供がいて、父親がいて、そこに魔王が歩み寄ってくる。この3役に加えて、情景を描写する語り部という4役を演じきらなければなりません。自分はそういう歌曲の世界で良いものを提供できると思っていますし、次の自分の15年を考えた時、この世界で先頭に立ってやっていきたいという気持ちがあります」
日本人では特に貴重な、低く深い声を持つバス・バリトン。
「自分の場合はバス・バリトンの中でも、低いバス寄り。ヨーロッパでも少ないです。
声種は望んで得られるものではない贈り物。ラッキーだと思います。バスは40〜50歳以降がベストの時期になると思うので、これからが勝負。周囲の期待も感じています。
リサイタルではブラームスの《バスのための4つの厳粛な歌》を歌いますが、バスのためと言いながら、どう考えてもバリトン用なんです。