新国立劇場バレエ団、小野絢子と米沢唯がのぞむ『ホフマン物語』のヒロイン像
この第2幕は多分、ホフマンの人生で一番幸せだった時期ではないでしょうか。
小野 この幕には、「ザ・」バレエ・シーンといえる場面があるんです。そこでのアントニアは、アントニアではあるけれどアントニアではない──彼女が夢見ていたバレリーナになって踊るのですが、パートナーは、ホフマン!彼女の中ではそこでもパートナーは彼がいい、ということなのでしょう。理想のパートナーとしてホフマンを巻き込んでしまうんですね(笑)。
米沢 普通の女の子からプリマ・バレリーナへ、短時間でガラッと印象が変わるのは大きな見どころですし、演じがいがあります。恋人のホフマンに対して、突然「(つんとすまして)私を持ち上げなさい」というような雰囲気の大プリマになるんですから(笑)。
小野 ブレることなく好きなものがあるというのは、バレエ作品のヒロインらしいところですね。
米沢 命をかけてでもどうしても踊りたいという思いに突き動かされ、ミラクル博士(実は悪魔)に理性のたがを外され、突っ走った先に死を迎える──大好きなホフマンさえも置いて!そんな情熱的なところにぐっときます。
三人目の女性ジュリエッタは“非現実的”
アントニアは、プリンシパルとして数々のヒロインを演じてきたふたりにぴったりの役柄といえる。