新国立劇場バレエ団、小野絢子と米沢唯がのぞむ『ホフマン物語』のヒロイン像
米沢はさらに別日程で、第3幕に登場する三人目の女性ジュリエッタも演じる。年齢を重ね、宗教に帰依したホフマンを誘惑する高級娼婦だ。
(撮影:鹿摩隆司)
米沢 彼女は完全に 、“女王”。ホフマンを連れてくるのはボスのダーパテュート(実は悪魔)ですが、彼女はホフマンの中にある欲望の世界、そのトップに君臨している女王だと私は考えています。どこか非現実的で、アントニアのように血の通った人という感じがしないように思いませんか?
小野 彼の中の気持ちの揺らぎみたいなものを象徴しているように思えますよね。まるで『白鳥の湖』で黒鳥が現れたときと同じく、勝手に落ちていくようにも見受けられます。
米沢 誘うとすぐついてきますから(笑)。ホフマンが自分で十字架を作って突き出すというシーンも印象的ですが、それは彼が、彼自身の中にある十字架を持って立ち上がる、ということなのかなと思います。
ホフマン役の中でもかなりのハイライトではないでしょうか。
このシーンはアントニアの話とも繋がっていると思うんです。彼女の死をずっと悼み続けていても、どうしても女性というものに惹かれてしまう。でも最後は、彼が強く立ち上がることによってダーパテュートとジュリエッタは消え失せる──。