2021年6月21日 13:00
スピッツ、再びロックバンドとしての産声を上げた『SPITZ JAMBOREE TOUR 2021 “NEW MIKKE”』初日公演レポート
決してコロナ禍以前と同じようにはいかないが、バンドの生命活動のひとつといえるツアーが再び動き出し、ロックバンドとしてのスピッツが再び走り出すことに、客席も、そしてステージ上のバンド自身もじんわりとした興奮に包まれているようだ。
演奏は今年でデビュー30周年を迎えるバンドとしての重みを感じさせながら、まるで産声のように瑞々しく響きわたる新鮮さも兼ね備えたとてもエネルギッシュなものだった。再び自分たちの曲が「ライブ」という空間に鳴り響くことの喜びと驚きを確かめるように、各楽器がそれぞれの醍醐味を全身全霊で体現しながら重なり合うダイナミズム。豊潤で多様なリズムの楽しさ、心の輪郭をなぞるようなメロディの典雅さ、孤独も勇気も「そこにあること」を分ち合う歌の深さと柔らかさ――スピッツがスピッツたる由縁が生の音の躍動になって響きわたる。
軽快なビートと穏やかなメロディの繊細な絡み合いが美しい『見っけ』収録のシングル曲「優しいあの子」や、『NEWS23』のエンディングテーマとして書き下ろされた、時代の暗闇の先へ光を求めて疾走するような力強い新曲「紫の夜を越えて」など、最新曲も過去曲も、有名曲もレア曲も存分に演奏され、会場をスピッツにしか生み出せない時間、スピッツにしか生み出せない世界に浸していく。