2021年9月24日 19:00
フルオーディション&こつこつプロジェクト 新国立劇場だからできる演劇の試み
と自省を込めつつ、フルオーディションだからこその“作品本位”による作り方のメリットを口にする。
倉持裕
一方で、実際のオーディションでは選考に頭を悩ませる部分も多かったよう。「やってみたら大変でした(苦笑)。死ぬ気で役を獲りに来ている人間のエネルギーはすごいです。普段は頭の中で決めるんですが、オーディションだと役者が発信してくれるので、想定外のことがたくさん起こって楽しい経験でした。最終審査になるにつれて、甲乙つけがたい役者が増えて、『どっちもいい。でもどっちか決めないと……』となってくる。この人を選ぶなら、(こっちの役は)この人も……という組み合わせが出てきて、作品の方向性をオーディションの段階で決めないといけなくなるんですね」とつらい決断を振り返った。
『イロアセル』チラシ(4種類)
物語の舞台はある島。そこで暮らす人々が発する言葉には独自の“色”がついており、誰が何を話したかがすぐに特定されてしまう。ところが、島民たちが自分の言葉に色がつかない手段を手に入れたことで、これまで覆い隠されてきた人々の本音や人間性が露わになっていくさまが描き出される。
10年前に新国立劇場での上演のために倉持が書き下ろした戯曲であり(※10年前は鵜山仁が演出を担当)