金子三勇士がトップダンサー柄本弾といざなうバレエ音楽の世界
本当にいいバレエの公演を見ると、言葉が聞こえてくるかのよう。その表現って、すごいですよね」
踊りと音楽。音楽家にとってもダンサーにとっても、切り離せない2つの芸術分野だという。
「私たち音楽家にとって、舞曲や踊りのリズムを意識しないことには、ほとんどの音楽作品の演奏が難しいと言ってもいいぐらいです。ピアノで初期に習う曲のひとつがバッハのメヌエット。メヌエットというのはもともと舞曲です。それがベートーヴェンのピアノ・ソナタになっても、ある部分には舞曲が入ってきたり、ロマン派のピアノ協奏曲でもワルツのリズムの楽章があったり。
柄本さんにお聞きしたら、ダンサーの皆さんは、ウォーミングアップでさえ、音楽を流しながらやるのだそうです。
毎日の生活の中に、私たち音楽家が想像している以上に音楽があるんだなということを意識させられました。面白いのは、たとえば私がピアノでバレエと共演する時に、“第3の解釈”が生まれることがあるんです。演奏者の音楽の解釈だとステップが間に合わないとか、途中で息切れしてしまうとか。そうするとそこで話し合って、ダンサーの解釈とも演奏の解釈とも別の、3つ目の解釈というのが生まれる。