新国立劇場『テーバイ』開幕レポート到着 ひとつの王国が衰退していく、壮大な物語に
衣裳も、ギリシャ悲劇でおなじみのローブではなく、オイディプス(今井朋彦)らは白スーツ&白リボンタイを着用しており、衛兵たちの衣裳も近代国家の装いである。
開演前から、壇上にはオイディプスの妻(そして、母親でもある)イオカステ(池田有希子)がおり、乳母車の赤ん坊をあやしている。
第一幕『オイディプス王』はオイディプスと、テーバイの市民を代表してやってきた神官の会話から始まる。神官は疫病による国土の荒廃、市民の窮状を伝え、オイディプスに国を救ってくれと嘆願する。そこへ、神託を手にしたクレオン(植本純米)が戻ってくる。クレオンは「この国の穢れ(=先王ライオスを殺害した犯人)を追放せよ」という神々の言葉を伝え、ここから少しずつ、先王の死の真相、さらにはオイディプス自身の出生の秘密が明らかになっていく…。
続く第二幕『コロノスのオイディプス』は、『オイディプス王』の頃からしばらく時を経た時代の物語。舞台中央に真っ赤なロープのようなものが垂れ下がっており、神々しさを感じさせる。
そこはかつてオイディプスが神託で「生涯を終えることになる」と示された復讐の女神の森。近親相姦と父殺しの罪を背負い、盲目となってテーバイを追放されたオイディプスと彼の旅に付き添う娘のアンティゴネが森に辿り着いたところから物語は始まる。